『予想どおりに不合理』あらすじと感想

本の紹介&感想

こんにちは!
今回紹介するのはダン・アリエリーによる『予想どおりに不合理』です。

この本は行動経済学の本で、「あなたが下す決断は本当に自分の自由意思によるものなのか?」について掘り下げています。一見難しそうな内容ですが、経済学を勉強していない人にもわかりやすい言葉で書かれているので、誰でも気負わずに手に取れる本です!
世界的にとても有名な本なので、タイトルだけは聞いたことあるよという人も多いかもしれませんね。

この本は、行動経済学に興味がある人はもちろん、興味のない人でも人間の不合理さを面白く学びたい人におすすめしたい本です!

あらすじ

『予想どおりに不合理』は、人間の行動や決断がいかに不合理なものであるかを教えてくれます。
人間の不合理さを解明するための様々な面白い実験や研究を交えつつ解説してくれるので、行動経済学を知らない人でも楽しんで読み進められます。

では、人間の行動や決断はどのように不合理なのか?
この本で紹介されている例は多くの人にとって身近なものばかりなので、思い当たる節がある人も多いかもしれません。いくつか例を挙げてみますね。

  • ダイエットすると決心したのに、数日後にはチョコレートの誘惑に負けてしまう人
  • 今回は締切り前に絶対に課題を提出して良い成績を取ると決意したのに提出日の前日に慌てて課題に手を付ける学生
  • お店で「2使ったら1つ無料で差し上げます!」のバナーにつられて買う予定でなかった商品まで買ってしまう人
  • 興奮しているがゆえに、冷静な時ならまずしないであろう行動や決断をしてしまう人

上の4つはほんの例ですが、意外と人間あるあるではないでしょうか?これ以外にも、人間はもっとたくさんの不合理さとともに生活しているのです。

ですが、そんなに不合理だと言われ、それをアイディアに富む実験を通して示されていったら、じゃあ私たちはどうしたらいいのかと思ってしまうかもしれません。でも、大丈夫です。この本のキモの一つは、人間は『予想どおりに不合理』なのです。つまり、人間はただ無秩序に不合理さを発揮しているのではなく、人間が不合理な行動や決断をする場面というのは予想することができる、と著者は言います。

不合理さを予想できれば、解決策を考えることができます。すべての不合理さに対して100点満点の対策を取ることは困難ですが、著者は実際にいくつもの解決策を提案しています。

それらの解決策を取り入れたら、私たちの生活が少し合理的になり、より良い行動・判断ができていると感じられるかもしれません。また、この本を読み、どういう場合に人間は不合理さを発揮するのかを理解するだけでも、次に似た場面に遭遇した時は「あ、これは不合理な行動をし易い場面だな」と認識するだけでも大きな違いを生むはずです!

著者 ダン・アリエリーは行動経済学の第一人者!

著者であるダン・アリエリーさんは、行動経済学の第一人者として知られています。人の行動に興味を持ったのは、18歳の頃にとてもひどいやけどを3度負って病院に3年間入院した経験がきっかけだったそうです(はじめに より)。

また、ダン・アリエリーさんは、高価なプラセボ(偽薬)は安価な薬よりも効果が高いことを示したことで、2008年にイグノーベル医学賞を受賞しています。イグノーベル賞とは、ノーベル賞のパロディとして創設された、「人々を笑わせ、考えさせた研究」に贈られる賞のことです。ちなみに、本書の訳者あとがきによると、授賞式に挨拶で「この賞をもらいたいがためにこの本を書いた」と言って笑いを取ったそうです!

感想

※あくまで私個人の感想です。また、ネタバレを含む可能性があります。ご了承ください。※

読んでいて印象に残った一文の一つを紹介します。

この本で紹介した研究からひとつ重要な教訓を引きだすとしたら、わたしたちはみんな、自分がなんの力で動かされているかほとんどわかっていないゲームの駒である、ということだろう。

予想どおりに不合理 p.320

『予想どおりに不合理』のエッセンスの一部を一文でよく表しています。

上記に加え、この本のもう一つの主張は「不合理さは予測できるものだから、対策を考えることができる」というものです。その対策は、日常に簡単に取り入れてある種の不合理さを回避するものから、個人の心がけではどうにもならないレベルのものまであります(提示された対策の具体性もまちまちではあります)。

不合理さが悪で合理性が善だとは必ずしも言えないだろうし(不合理さが人間味を生んでいる部分もあるだろう)、どれが正すべき不合理さなのかについて完全に合意することもできないだろうし、多数にとって良くない不合理さを改めようとして何かを実装するには障壁が多そうなものも多いし…奥が深いと感じました。

印象に残ったこと①:需要と供給

印象に残っている2か所を紹介します。一つ目は、2章「需要と供給の誤謬」で書かれていた経済学が前提とする、市場価格は互いに独立する要素である需要と供給の均衡によって決まるということについて、行動経済学の観点から異を唱えた点です。

私の専攻は経済学系ではありませんが、大学一年生の時にマーケティング入門の授業を履修した時、上記の経済学における重要な主張について、直観に反する気がすると思い違和感を覚えていました。なぜなら、色々広告を打ったり戦略を考えて商品を売ろうとしているのは企業側で、消費者側はそれに魅力を感じるか否かで購入するかどうか決めますが、ほとんどの場合は向こうの言い値で買うのだから、こちらが影響力を企業側に及ぼしている実感はないのになぁ、と思ったからです。

この違和感はその先数年間消えないままでしたが、この本を読んで直観的にも納得のいく説明に出会うことができました。需要と供給は互いに依存していることや、現状は(因果関係がやや逆転して)市場価格が消費者の支払い意思を左右していることが多いことを学んだからです。

印象に残ったこと②:「社会規範のコスト」

印象に残ったことの2つ目は、4章の「社会規範のコスト」です。この章では、人間は市場規範と社会規範という2つの世界を持ち、状況に合わせてどちらかの規範を適用していると主張しています。まず、市場規範とは、物事を考える時の基準がお金になることを言います。反対に、社会規範で基準となるのは、社会のルールや道徳、信頼という目に見えないものです。

著者によると、どちらの規範を適用するかを間違えると大変(親族での食事会で市場規範を出してしまうと関係性が悪くなるなど)、また2つの規範を混ぜてしまってもよくない、とのことでした。色々な実験を紹介したのち、著者は多少は社会規範を重視して一昔前の生活を思い出すのも悪くないかもしれない、とこの章を結んでいます(多少曖昧な主張の結び方ですが)。

この章を読んで、「社会学っぽい観点を行動経済学に取り入れるとこうなるのか、面白い!」と思いました。社会規範には、人と人とのつながりや人間の温かさというものに通ずる部分があると思います。日本には、お金の話をすることを嫌う風習が欧米諸国と比べて強いように思うので、社会規範と市場規範のとらえ方も国や文化間に違いがあるのかもしれません。

おまけ

また、最後の謝辞の書き方も素敵だったなと思いました。良く、巻末の謝辞では本の執筆に貢献した人の名前を出して感謝の意を示しますが、この本では本で紹介した研究に関わった人たちを他の本よりしっかり紹介しています。研究者たちの所属だけでなく、彼らとの出会いや彼らの人となりにも少し触れたりして、著者の心が表れているようでした。

おわりに

いかがでしたか?
興味のある方は、以下から詳細を見ることができますので、よろしければチェックしてみてください!

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