こんにちは!
この記事では、ブレイディみかこさんによる『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』のあらすじと感想を紹介します!
この本は、Yahoo!ニュース | 2019年に本屋大賞 ノンフィクション本大賞受賞を受賞した作品なので、書店に並んでいるのを目にしたり、タイトルを聞いたことのある人もいるかもしれません。
この本は、帯のキャッチコピーに「一生モノの課題図書」と書いてある通り、中学生くらいの子どもから大人まで、色々な人におすすめしたい本です!
あらすじ
著者であるブレイディみかこさんは、英国で中学生になる息子を育てています。
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』は、そんなみかこさんと、日本人の母とアイルランド人の父を持つ「ぼく」が中学校生活を通して直面する問題や感じる様々な思いを綴った本です。
中学への進学を機に、「ぼく」の世界は一変します。
それまで「ぼく」は、その地域の中では1位の公立のカトリック小学校へ通っていました。小学校の同級生はみな1位の公立カトリック中学校へ進む中、「ぼく」は知り合いが誰もいない 「元底辺中学校」 へ進学を決めます。
そこでは、カトリック小学校という中流階級以上の家庭の子どもたちが集まる場所では見聞きしなかったことを経験し、「ぼく」は新しい生活を楽しみながらも色々なことを考え、成長していきます。
中流階級の子どもや貧困層の子ども、人種の違う子どもなど色々なバックグラウンドを持った生徒たちが入り混じる「元底辺中学校」で、「ぼく」が経験したことを少し紹介します。差別的な発言を繰り返す移民の子の話や、ジェンダーの話、アフリカから来た転校生の女の子の話などなど。
英国の中学校が社会の縮図になっているとでも言えそうな環境の中、「ぼく」とともに母であるみかこさんも悩み、考えて生きた日々が綴られています。
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』 というタイトルの意味は、本の比較的序盤でわかります。ですが、このあらすじを踏まえてそれがどんな意味なのか、考えてみるというのも面白いかもしれません。
感想
※あくまで私個人の感想です。また、ネタバレを含む可能性があります。ご了承ください。※
この本を通して、印象に残った部分を紹介します。
善意はエンパシーと繋がっている気がしたからだ。一見、感情的なシンパシーのほうが関係がありそうな気がするが、同じ意見の人々や、似た境遇の人々に共感するときには善意は必要ない。
「『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』5 誰かの靴を履いてみること」より
他人の靴を履いてみる努力を人間にさせるもの。そのひとふんばりをさせる原動力。それこそが善意、いや善意に近い何かではないかな、と考えていると息子が言った。
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』におけるキーワードの一つは「エンパシー」だと思います。まずは、そのエンパシーと、文中に登場するシンパシーがなんであるかを説明します。
みかこさんの説明を元にまとめると、以下のような違いがあります。
- シンパシー(sympathy):感情や行為を理解すること。同情や共感をすること。
- エンパシー(empathy):他人の感情や経験などを理解する能力。
つまり、シンパシーはかわいそうな人や弱い立場にある人に対して人間が自然に抱く感情を指しているが、エンパシーは特別かわいそうだなどと感情が自然には動かない場合でもその人の感情や考えを想像しようとする力のことを指します。
つまり、シンパシーを抱く相手は自分と似た立場にいる場合が多く、エンパシーを働かせる時はそうではないことが多いのです。これを踏まえて、みかこさんはシンパシーは感情的状態、エンパシーは知的作業ともいえるだろうとしています( 「『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』5 誰かの靴を履いてみること」より )。
上の文章は、「エンパシー」とよく混同される「シンパシー」の違いにも触れながら、「エンパシー」を持つことの難しさや、エンパシーが持つ潜在的な力を感じさせます。
そして、英国の中学生、日本では小学校高学年の歳である「ぼく」がエンパシーに対してそんな考察をするという点もすごい。
社会の縮図とも言える「元底辺中学校」でたくさんのことをすごいスピードで吸収する「ぼく」は、多くの大人が建前や自分の面子を気にして雑念が入ってしまいそうな場面でも、人と人との付き合いのあるべき姿に対して純粋な心で彼なりに悩み考え、時には答えを出していきます。そんな彼の在り方に、それぞれの人の心の中で、何か思い当たるところや記憶の隅から思い出されることがあるのだと思います。
また、もう一点だけ心に残った部分を挙げるとすれば、母親であるみかこさんの「ぼく」への接し方です。
みかこさんは、「ぼく」を1人の自分とは違う感性を持った人間として認め、尊重しています。みかこさん自身が、「ぼく」が抱える悩みや問題を通して「ぼく」と共に成長する姿、そして「ぼく」から新しい考え方を学ぶ姿が描かれています。
これは、書いてみるのは簡単ですが、意外と難しいことだと思います(私に子どもはいないので想像ですが…笑)。子どもを1人の人間として尊重することは、その子の人間的な成長にとってとても重要なことだと私は思います。文中で紹介されていた「英国ではUNICEFが掲げる子どもの権利について小さい頃から学校で学ぶ」というところにも、そういった姿勢があらわれているように思いました。
この本は、中学時代の恩師におすすめしてもらったことがきっかけで読んだということもあってか、特に中学時代の何気ない日常に転がっていた出来事たちを思い出すきっかけをくれました。
おわりに
いかがでしたか?
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』は、中学生くらいの子どもから大人まで、色々な人におすすめしたい本です。それぞれの人に、刺さる箇所があるはずです。
この本が気になるという方は以下からチェックしてみてくださいね✨
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